避難小屋~巻機山頂~下山

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ニセ巻機山は風が吹いていた。




7合目付近からゴアテックスの合羽を着込んだ。




予定コースタイムの4時間が過ぎた辺りである。




ニセ巻機山から避難小屋を通過して山頂へ登り返すラストシーンがクライマックスだ。




木道が古くて歩きにくい。










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避難小屋に到着し山頂が正面に迫っている。




山の風景があまりにも美しいので真っ先にシャッターを切った。




これを登れば山頂だ。




その前にやることがあった。










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避難小屋の周辺は団体で人だかりが出来ていた。




避難小屋に入ってバイオトイレを借りた。




100円を箱に入れた。




無人の小屋だが大変綺麗であり、泊まってみたい気もする。




避難小屋に水場はなく、それらしい目印もなかった。




避難小屋から下へ降りる道があったが、面倒なので降りなかった。




下は平らなスペースがあり、数人が集まっていた。




そのときはそこがテント場だということは考えても見なかった。




調査不足である。




ヤマケイDATA BOOK 2008によると、ここ巻機山はテント設営が5張り可能だと書かれてあったが、山頂に小屋があるのかと思っていたのだ。




水場もそこにあるだろうと想像していた。




ここでもし、下へ降りていれば水場にありついた可能性は高い。




こういうところが、なんと言うか、疎いのだと思う。











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いろいろな布を貼り付けたようなカラフルな山々を見ていて、あることに気がついた。



巻機山という名前の由来がなんとなく分かってきたのだ。



登ってみて初めて分かることもある。









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足がだいぶ疲労していて足取りが頼りない。



テント泊装備の思いザックを担いで標高差1300m以上の登山は過去最高ランクだと思う。



それでもまだまだ余裕のある振りだけは上手くなっていた。









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晴れてきそうな感じもある。



遠くの山々が見渡せるようになった。



日差しが照りつけるよりはむしろこれぐらいのコンディションが最高なのかもしれない。



昨日のコーヒーの人もそういっていた。










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バスの中で車窓を見ているときも、山を登っているときも、終始考え事をしていた。




ある計画が上手く行っていない。




ある計画とは、つけあがった人間どもを処分する計画だった。











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カネを出して放置すれば子供が不良になるように、誰でもつけあがるようになる。




人間とはそういうものだ。




初めのうちは関係のない他人事だと思って見ぬ振りをしたが、やがて仕事をおびやかす存在にまで膨れ上がってしまったので容認できなくなった。




つまり退却させる作戦を企てた。



仕事を大きく変更したのはそうした事情からだった。



これでヤツらは自動的に切り離されるのは時間の問題だった。



しかしこの筋書きには誤算が含んでいた。



あと一歩。



あと一歩のところで何かが噛み合わない。



見えない副作用が一枚噛んでいるとしか思えない。









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登ってきた尾根が見える。



単なる紅葉とはまた違う。



高価な織物を連想させる色使いが独特の世界を作っていた。








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とりあえず山頂に到着してザックを置いた。


椅子があったので座って休む。









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山頂は風が吹いていた。



割引山の方角へカメラを向ける。



椅子に座っていると鍋割山の方から登ってきた二人組みがやってきて少し話をした。



二人はしきりに地図を確認してブツクサと文句を言っている。



地図と山頂付近の道が合わないというのである。



確かにわたしも薄々感じてはいたが、気にしてなかった。



二人が気にしていたのはここが山頂かどうかということらしい。



山頂がどこかと尋ねられたので、ここが山頂だと言った。



それは端的に、山頂の標識があったから自信を持って言ったのだが、牛ヶ岳方面に行くと本当の山頂があるのかもしれないと、少し思ってしまった。










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2009年9月20日 10時45分 巻機山 登頂










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「写真を撮ってやろうか」



キャンプ場で合った人に声をかけられた。



こんなとき、わたしは決まってこういう。



「いいです」



このときは少し悲しくなる。



だが人に撮って貰った写真を後で見る方が悲しい気持ちになるのは分かっているので、写真は絶対に撮らないことにしている。



牛ヶ岳にも行く予定だったが行く気がしなくなった。




出発時刻が一時間遅れ、コースタイムも40分遅い。風も出てきて寒くなってきたし、足の疲労がひどい。



牛ヶ岳は中止にしても後悔はしないだろう。










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「生物の死こそここでは自然であり、生きているものこそここでは孤独だ。」

             マークスの山より











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下山の時は雲が晴れていて天狗岩もはっきり見える。


キャンプ場から見るとシンボル的な岩である。









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登りのときは雲に覆われていた5合目の展望も、すっかり晴れて封印が解けていた。










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下山終了。山麓キャンプ場に戻って再びテントを張った。

キャンプ場から見ると天狗岩がこんな風に見える。

午後は天気が良く、キャンプ場の客も多かったが、テント設営には困らなかった。



水がないのでまたガーゼでろ過して煮沸し、コーヒーを飲んだ。

こういう時に限ってコーヒーが飲みたくなる。

ちなみにコーヒーだと沢水の不味さを感じない。




桜坂駐車場を出てすぐに右の遊歩道へ曲がると10分ほどで山麓キャンプ場に辿り着くことができた。

二日目のキャンプを楽しんだ。

雰囲気とかキャンプ地のレベルは高いと思う。

蛇口から沢水が出てくることを除けばの話である。




両隣にテントが増えた。

そのうちの一人と話をした。

ここから登山口までどうやって行けばいいかと質問してきた。

遊歩道の看板から登っていけば桜坂駐車場まで徒歩10分だと教えてやった。

ここのキャンプ場にテントを張ったまま車も放置して登る結論になったようだ。

好きにやればいい。




会話の内容から推測すると関西方面から来たような感じを受けた。

「昨日は苗場山を登ってきて、明日、マキに登ろうと思っていて、その次に谷川に行って、その後は魚沼(駒ヶ岳)に登るんだけど、みんなこんな感じで登るんでしょ?」




「登らねーよ」




わたしは心の中でそう思ったが、声には出さなかった。



シルバーウィークでまとめて登る計画らいい。

気持ちは分からないでもないが、おそらく、ネット上のブログやホームページを見てきて、いても立っても居られない、といったところだろう。





テントの横で飯を作っていると声が飛んできた。

昨日のコーヒーの人だ。

「今日も?」

と聞いてきた。

車がないので翌朝バスで帰ることを伝えた。

コーヒーの人は明日、谷川岳に登るという。

「ああー、谷川はお盆に登りました。明日は苗場に行くんです。」

とわたしは言った。




コーヒーの人は東北訛りが少し混じっていたので、仙台辺りの人ではないかと初めのうちは想像したが、新潟の地元の人である可能性が高い。

出会う人はだいたい同じ抑揚であり、それが新潟の抑揚であることが段々と分かってきた。




コーヒーの人も同じ場所にテントを張った。しばらくしてから半分に切った梨を持って来てくれた。

一人では食べきれないから、と付け加えながらわたしに梨を差し出す。

ありがたく頂戴した。

一人暮らしをしていると梨などを食べる機会は全くないわけで、せいぜい買ってもバナナぐらいのものだ。山で食う梨があんなに上手いものだとは思ってもみなかった。

ほとんどが水分である。




友達がいないのでこういう会話は山に来ない限りできないのは事実であり、ずっと以前から知り合いであるかのように会話する自分が居た。

なにげない会話やぎこちない会話がごく自然に流れていき、間もなく夜の闇に包まれようとしていた。


(苗場山に続く)


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