秘境、秋山郷へ行く

ブログの更新を中断していた。

サボっていたわけでは、ない。

多忙の中なんとか時間を作り、今こうしてパソコンの白い画面に向き合っている。

頭の中が半ば忙殺されていて記憶が薄れているかもしれないが、とにかく、健康だ。


今年のシルバーウィークに山旅に出たのは事実であり、そのときの記録を残さねばならないわけだが、記憶を頼りにするよりも、この白い画面にたかだかどれだけ気の利いた文字を書き書きできるかに掛かっている。

したがって、こういうことの良し悪しを決めるのは、幼い頃におやつが出されたとか、家族と会話をしたということだと思う。

その点、わたしはフシダラであったので、せいぜい薄れた記憶を辿ることにしよう。






この日は巻機山麓キャンプ場で朝を迎えた。

旅は順調だった。

バス時間が7時過ぎだったのでゆっくりと過ごした。

前日にマキを登ったのでとても気分がいい。

テントを撤収してザックを担いでバス停に一人で歩き出す瞬間、なんだかこう、旅人なんだと自覚がでる。

約30分の道のりだが、登ってくる登山客の車が必ずと言っていいほど停車して道を聞いてくる。

まるでマニュアルに書かれてあるかのように「桜坂駐車場はこの先か」というのが彼らの決まり文句であった。

途中で側溝にタイヤを落とした車がいたが旅人には何もできない。



清水のバス停で石に腰を掛けてバスを待った。

この日の旅先は秘境、秋山郷である。

和山という所でキャンプをし、翌日に苗場山に登る計画だった。










画像


清水から六日町へ向うバスの中でしばらく考え事をしていた。

子供の頃、遠足や学校行事でバスに乗るのが大嫌いだった。

団体行動がとにかく嫌だった。

規則に拘束されることが窮屈なのだ。

山に登るようになってから一人でバスを使うようになり、いつの間にか贅沢な遊びに変わっていた。

一人でバスに乗っている自由空間は自分だけのものだ。



六日町駅から越後湯沢駅までは何駅あったかは覚えていないが、15分ぐらいだったと思う。

日差しが強く、わたしは日陰に佇立していた。

やがてバス待ちの行列ができてきたので仕方なく後に並んだ。

ここは観光地である。










画像


バスは山の中腹を走り峠を越えた。料金の割には長い時間乗っていた。

わたしは津南という場所で降りた。

秋山郷に行くためには途中でバスの乗り換えが必要であり、中継地が津南であった。

バス停を調べるときは、「津南」か「津南駅」かを慎重に見る必要がある。

バス利用の経験回数は豊富なので、この辺はなんというか、直感で分かる。

津南バス停で降りると、予想通りそこは駅ではなかった。

ここまでは良かったが、次に乗るバスは津南駅からだと信じていたのは決定的なミスであった。

わたしは道路標識から「駅」の文字を見つけて、まんまと津南駅へと歩いて行った。




歩けど歩けど駅らしい風景は現われない。

30分ぐらいあるいて不安になり、角の煙草屋で道を聞いた。

道を聞かれた方はたいていの場合こころよく対応してくれるのは旅の経験で知っている。

旅人の特権みたいなものだ。











画像


津南駅は橋を渡ればすぐだという情報をキャッチした。

わたしは突き進んで大きな橋を渡った。










画像


確かに津南駅は、あった。

バス停もあった。

しかし、どうも様子がおかしい。

秋山郷行きのバスがない。

津南駅に入り、中をうろうろしたが時刻表はなく、仕方なく売店のオッチャンに聞いた。

ここでもこころよく教えてくれた。

旅人の特権だ。



行き先を聞かれたので渋々と秋山郷に行くことを告白したが、そのバスはないという答えが帰って来た。

オッチャンの説明は続く。

秋山郷行きのバスはここから少し先のバス停だという。

嫌な予感が過ぎる。

大体こういう予感は当る。




「そのバス停の名前は何ですか?」

「津南バス停です」






バス時間まで30分以上あった。

まだ間に合う。

同じ道を引き返して再び津南まで歩いた。

途中コーラを飲みながらスタスタと早歩きをした。


ううむ、詰めが甘かったか。




旅ほど面白いものはないが、時間が狂いだすとその場で予定を即決しなければならないのが欠点だ。











画像


わたしは秋山郷に向うバスのシートにうずくまっていた。

一応順調だった。

バスは途中から峠の細い道を走った。

秘境である。ワクワクした。

そのとき確かに幸福だった。

見たこともない風景がバスの車窓を流れていくシーンは、いつ見てもやめられない。


家族連れのご一行様と一緒でいい雰囲気ではあった。

途中で乗客は一人になり、バスは容赦なく秘境へと走る。


和山温泉入口という場所でわたしは降り立ち、いつもの贅沢な瞬間を味わった。

一人だからこそ得られる至福のしびれるヤツだ。








画像


栃川高原キャンプ場はすぐにお目見えした。

その向こうに何かの写真で見覚えのある山容が飛び込んできた。

あの山が苗場山かどうかは判別がつかないが、方角からしてあの山を通過したように思う。









画像


奥の方に歩いていくと「ヒュッテひだまり」の山小屋が現われた。

隣には林間キャンプ場があり、テントが二張りあった。

午後の時間がたっぷりあった。

ヒュッテひだまりに料金を払いに行き、テントを張る準備に取り掛かる。



向かい側には広大なオートキャンプ場がある。

フリーサイトは林間なので日差しはない。

どちらかというと広大な芝生のキャンプ場が好みなのだが、林間の方で涙を飲んだのだ。

ザックからテントを取り出すと昨日使用した後なので濡れていた。

芝生のキャンプ場でテントを広げて乾した。

日差し強くそよ風があったのでテントはすぐに乾いた。



ヒュッテひだまりには温泉があることになっていたので楽しみにしていた。

聞いてみると宿泊客が少ないので入れるとのこと。

つまりいつでも入れるとは限らないということだ。

やたらと熱い温泉であった。

温泉は熱いのが好みだが熱すぎたので水を埋めながら入った。

温泉に入るときは出たり入ったりを繰り返して、時間をたっぷり掛けて入る方だ。

しかしこういう所では少々嫌がられるだろう、と思いつつ軽く一時間は入っていた。

なかなか出てこないので小屋の人が心配になったと言っていた。

でもわたしにはこれが普通だ。









画像


テントは張っていた先客が「登山ですか?」と聞いてきた。

人と会話をする気分ではないが話を聞くと苗場山から和山コース下山してきたらしい。

折角なので和山コースがどんな感じなのか知りたくなった。

最初の入口だけ見つけられれば迷うところはないという。

その人はもう一つ山を登ったと言っていたがその山の名前が思い出せない。

すぐにレポートを書かないからこういうことになる。

ネットで検索すれば調べられる。そうそう、鳥甲山に登ったと言っていたのだ。

苗場山に登っている最中も屏風のように凛々しく立ちはだかっているのが鳥甲山だ。

存在感は一級品であり目を楽しませてくれる。

でも、わたしが明日登るのは苗場山の方だ。

山頂が広大な高層湿原になっているのは既に写真で知ってはいた。

その山頂が一体どうなっているのか、この目ではっきりと確かめたい。

(続く)



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス