苗場山三合目~大瀬の滝~小赤沢

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苗場山から小赤沢へ下山していた。

登りは6時間歩き続けたので限界ギリギリであった。

ちょうど、今年の夏に登った雲取山が登り6時間半だった。

あのときも限界点に達していた。

山が好きなんだなと、自分でもあきれている。










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下山後は適当な場所で野宿キャンプを張らなければならない。

そのためには水が必要だ。

苗場山には水場がなく、山小屋で500mlの水を350円で買ってはいたが、やはり足りない。

そういう次第で途中にある四合目の水場を充てにしていた。

水場の立て札はあったがどう見てもただの沢にちょろちょろ流れている水だ。

ザックからコップを取り出して汲んでみると砂やゴミが入る。

飢えているわけではないので飲まなかった。











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三合目登山口に到着。とりあえず登山は終了だ。









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三合目登山口は広い駐車場とトイレがある。

団体の登山客がバスで来ているようだ。大型バスが2台いた。



さて、ここでテントを張るのも悪くない。人が居ないことは重要なファクターだ。

しかし翌日バスで帰るのだが時刻が分からないので、なるべく下へ降りたほう賢明だろう。

下界にテントを張る場所が見つかる保障はないが、標高1,200mは高すぎる。

車道の一本道を歩いていった。

予定にない行動はまさしく旅の醍醐味であった。

どれだけ歩いたかは覚えていない。

多分20分ぐらいだと思う。



一台の軽トラックが止まった。

中でオッチャンが合図している。

ザックを荷台に積めと言っている。


おー、サンキュウ、オッチャン。


旅というものは何が起こるか分かったもんじゃない。

これまでの旅の経験で知っていることは、旅人は珍しい存在らしい。

電車の中でも20代の女性から駅を訪ねられることもある。

登山の格好をしていなければ絶対にありえないことだ。

ザックを担いで旅人の振りをしていると話しかけられる率が非常に高い。

今だってこうやって見ず知らずのオッチャンが運転する車に乗っている。


これだから旅はやめられない。




「登ったんですか?」

「きのこ取り」

「この辺は長野なんですか?」

「うん」

「この辺の人ですか?」

「うん」

「キャンプする場所ないですかね」

「あーー、ある。上の原。でも少し遠い。一時間ぐらい歩く。」



オッチャンは終始言葉すくなだった。

道路の分岐地点で停車した。

「どうする?上の原に行くならこっちの道。水場のあるところなら途中にある。」

どうやら水場があるテントが張れる場所があるらしい。

わたしはその場所に興味が沸いてきたのでそこで降ろして貰った。












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そこは大瀬の滝という観光名所だった。観光といっても人は誰も居ない。

近くの工事現場のトラックがひっきりなしに往復する。トラックをUターンさせるのにここのカーブを利用しているのだ。


ザックを降ろして大瀬の滝の水飲み場で水を汲んだ。

コップには砂やゴミが入っていた。

4合目の水場と変わらない。

ゴミが入る。











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オッチャンはこの水が飲めると言っていた。

すすってみると確かにおいしい。

ゴミや砂を除外すればいいことになる。

早速ガーゼを取り出して、巻機山麓キャンプ場でやったのと同じようにガーゼでろ過をしてみる。

ところが水量が半端ではない。

水道の蛇口と比べ物にならないほど勢いよく大量に沢水が不規則に出ている。

ガーゼでは歯が立たない。

タオルを出してろ過をしてみる。

白いタオルがすぐに茶色くなる。

ということは泥で汚れているということではないか。

30分ぐらいいろいろ試していたが試行錯誤の末コツがつかめてきた。

つたない文章では表現できるようなことではないので敢えて詳しく書かないが、要約すると、こうだ。

--タオルを丸めてパイプの半分を塞いで残りの半分から水を横に飛ばしてタオルから滴り落ちる水を鍋

に入れる。--

この手法でゴミの80%は除外できた。











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滝がうるさいのでキャンプには不向きである。

苗場山の一合目に位置する場所であるが、三合目の駐車場まで車で行けるのでここから登る人は居ない。










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沢の水で石狩スープを作る。これが美味い。









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日が暮れてきたのでテントを張った。

いろいろ探し回ったがこの場所しかない。

後に見えるのが大瀬の滝。うるさい。


工事現場のトラックの往来は5時きっかりにハタとやんだ。

テントで寝ているとき不意に車が入り込んでこないように工事現場用ポストで入口を塞いだ。

見つかると怒られるかもしれないと思いつつ、こっちも必死なのだ。

ちなみに朝チャンと元に戻した。











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朝起きたら雨だった。うっとうしい。

テント内でザックのパッキングをして合羽を着た。

最後にテントを畳む。

この日、始発のバスに乗り遅れた。

雨が降っていなければ間に合ったに違いない。


大瀬の滝から一時間くらい歩いた。

小赤沢の集落に来た。

ちなみにわたしはこういう道を歩くのが大好きだ。









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小赤沢の目抜き通りに到着しバス停を探す。

通行人にバス停を聞いた。

僅かの差で始発バスが出発した後だった。

読みかけの「マークスの山」を取り出して読書にふける。

早朝では温泉もやっていないだろう。

9時ぐらいにお土産屋に行って名物の栃餅を買った。

今回のお土産である。もちろん自分への。










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時間を持て余している。温泉の看板を頼りに歩いた。

風情のあるので写真を切り取る。









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楽養館という温泉にやってきた。

ネットで事前に調べていたので名前だけは知っていた。

効能が優れているので入りたかったがこの日は定休日であった。











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秘境、秋山郷をトボトボとほっつき歩く。

子供のころから旅に憧れていた。

一人で永遠に歩き続ける旅だ。

マンガや寓話の世界に出てくる非現実話だと知りつつも旅をしたい衝動は抑えられず、山登りとミックスさせて無理に実現させているのだと思う。

旅をしていると本当の自分を取り戻すことができる。

人間社会での時間拘束や、マンネリから作り出される嘘や、カネを崇拝するだけのゼンマイ仕掛けの一切を左肘で払いのけて机の下に落っことし、わたしは旅に出る。











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入りたかった楽養館の全景がもの悲しい。

旅の終わりが近づいて来ている。

このあとバスに乗り、越後湯沢まで行き、駅の中温泉に入れば旅は終了だ。










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この地を踏んだことを忘れはしないと思う。

予定では赤湯温泉経由で下山するつもりだったので小赤沢に居るのは運命の悪戯だ。


「日本は狭いようで広い。」


霧島神宮駅前のクリーニング屋のオバサンも言ってた。










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無人餅つき機を観察する。


沢水が柱の片側の貯水槽に貯まり重さで柱が傾く。

すると貯水槽の水が流れて軽くなる。

柱の反対側には石が取り付けられているので再び柱が元に戻る。

この瞬間、杵が臼の中を付く。

ガクンという鈍い音が辺りに響いていた。










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わたしの中では確実に何かが始動していた。

だがそれが何なのか、このときはまだ判らなかった。

(完)

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