九折越→笠松山→本谷山→ブナ広場→古祖母山前

5月1日 5:30 九折越

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目が覚めてからパッキング完了までおおよそ1時間半かかる。

シュラフを畳んでパッキングするのが上手になったと思う。

シュラフが片付いてから外に出たら月が出ていた。

3時ぐらいから隣のテント撤収がバサバサとうるさいと思っていたらもう居なかった。

さては、縦走したな。




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早朝なので気持ちがいい。

鹿がかけて行くのをチラッと見た。




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笠松岳に向う稜線に出る。

気温が上がっていくので上着を調整する。

本当に気持ちいい場所を歩いているときに限って、書くことはない。




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傾山から祖母山までの縦走は30kmのロングコースであった。

家に帰ってから調べるまでは知らなかった。

結構、無茶なことをしているなと、今更ながら思うわけだが、こういう無茶なのが好きなのである。




5月1日 7:00 笠松山

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笠松岳 登頂。

向こうに見える本谷山が美しい。





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会社の仕事もかなり無茶なことをやっている。

それまでやっていた仕事は必要ないことだと決め付けて終止符を打ち、辞める覚悟をちらつかせながら全く違う仕事がないか要求したのはリーマンショックの2週間前であった。

今思えば随分無茶なことを仕掛けたと思っている。

あの不景気では会社側も首を切れなかった。

そういう社会情勢を大いに利用しながら今の仕事がわたしのところへ転がり込んだのだ。

人生には誰でも引き金を引くときが訪れる、そういうのを知った。

いつまでも石橋を叩いていては道は開けない。ピストルをぶっ放しさえすればいいのだ。

あとは険しい山登りと同じである。





5月1日 8:30 本谷山

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あれから一年半が経ち、新しい仕事をゼロから勉強しなおして崖から這い上がった。

なんと痛快なことだろう、と思う。

こういうことができるのは人間のタイプによることも手相学で分かってきた。

自分が最も得意なこと、それが崖から這い上がって見せることだったのだ。


仕事とライフワークを分けてはいるが、どちらも山登りだったのである。

無茶なことをするのは付け上がった人間社会のマンネリにナイフを指すためである。





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計画を立てたからこそ通過できる。それが縦走の楽しいところだと思う。

30kmのロングコースを一人で衣食住を担いで縦走する無謀さが痛快であり、これが仕事以外のライフワークであることがさらに刺激的なのだ。

仕事とライフワークで無茶を二ついっぺんにやっていることが、なんだか可笑しくてたまらない。

わたしは無茶なことが大好きなんだってことが、今分かった。




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一晩寝ると次の朝はまた快調に歩けるようになる。

疲労は後半に来る。



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歩いていると水場の立て札が目に止まった。

そのまま素通りする。

こんな所に水場があったかなと地図を確認すると、確かに本谷山手前に水場がある。

縦走路からすぐ近くにあることを思い出し引き返した。

小道を入っていくと水場はすぐ近くに出現した。

水は満タンにしておくのが良い。重さなどはほとんど変わらないのだ。

わたしはザックを降ろし、持っている水をゴクゴクと飲んだ。

九折越で汲んだゴミが混ざっていない良質な水だ。

この水を捨てずに目の前に流れている水を継ぎ足した。

これが失敗だった。

ゴミが混ざるのだ。

沢水なので仕方ない趣はある。

それにしてもうかつだった。

コップも持っているのだから確認をするべきだった。

一旦水を全部捨てる。

最初からまた汲みなおす。

やはりゴミが入る。

しかもパイプの位置が良くないので容器は満タンにならなかった。

汲む前よりも少ない水をザックに詰め込んだ。

幸い縦走路の途中に何箇所も水場はある。




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本谷山 登頂。

三角点に腰を下ろしてソイジョイを食べる。



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改めて見るとこれが一番いい写真かもしれない。

写真左が古祖母山、中央が障子岳、右が祖母山となる。

手前の丘を下っていくとブナ広場があり尾平越まで下る。

尾平越を通り越して直進すれば写真左の古祖母山に行く。



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縦走を続ける。

のんきに歩いているわけでは、けして、ない。

わたしには急ぐ理由があった。

ブナ広場までを本日の行程とするか、その先へ向うかの選択をしなければならなかった。




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九折越→ブナ広場は行程が短い。

ブナ広場→祖母山までは行程が長い。

このギャップをどう乗り越えるかが難しい。




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縦走を成し遂げるには、計画、体力、運が必要だと思う。

そのうち一つでも欠ければ縦走は崩れ落ちる。

勉強の成績が良く、スポーツ万能で、生活もうまくやって行ける人、つまり成功の可能性は極めて低いと見なければならない。

運とは、天候のことである。

今回の縦走では、計画性が抜群であったが、体力トレーニングを怠ったことが如実に露呈した。

足の疲労が後半に来るのである。

それでも天候が終始、見方をした。




5月1日 9:40 ブナ広場

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ブナ広場という良好なテント場があることは以前から知っている。

写真でしか見たことがないので全体像がつかめない。

ブナ広場の雰囲気に段々近くなっていく様子である。



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テントが見えてきたのでこの辺がブナ広場だろう。

確かに雰囲気がいい。

計画ではこのブナ広場で本日の行程が終了である。

しかしテントを張る気がぜんぜんない。

時間はまだ9:40分であった。

この縦走路の問題点はブナ広場から次のテント場である山頂までが長い。

10時間以上かかる。今までの経験からコースタイム通りは行かないのは明らかであるが、もしコースタイム通り行けば16時には山頂着になる。2時間遅れても18時なのでまだ明るい。

かけてみることにした。



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その前にやる仕事があった。

ブナ広場で水を汲むのを忘れてはならない。

水場の看板が見当たらないのでそのまま直進した。

左に道がないか注意しながら歩くが、そのような道もない。

仕方なくブナ広場に引き返すとテント場で眠っていたいた人が起きていたので尋ねてみた。

逆方向で歩くと確かに木に看板があり、水場への小道が続いていた。

水場はすぐ近くにあり便利であった。

本谷山で汲んだゴミの入った水を捨ててブナ広場の水を汲んだ。

容器には僅かにゴミが入るが、こういうもんだというのが段々分かってきた。

本谷山よりはこっちの方がはるかに良かった。



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尾平越を通過。

尾平へのエスケープルートを確認した。

見た感じだとエスケープルートというよりは需要によって良く使われているルートにも見える。

かなり急坂である。



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古祖母山へ向う途中、二人組みに追い抜かれる。

そろそろ足に疲労が襲ってきた。




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追い抜かれた二人組みが展望台に居た。

古祖母山まで行くという。




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わたしは祖母山まで行くといったら驚かれた。

この写真の稜線を指差して、古祖母山から祖母山まで繋がっている稜線を「グワー」って行くのかと、と聞いてきたので、「うん」といった。

二人組みは先に出発した。

わたしは後から追うが、歩幅がスローペースになり数歩ごとに立ち止まる状況に陥った。

登山道で何回も座り込み、毎度のことながら体力トレーニング不足が深刻であった。

ソイジョイを食べても体に効果はなく、テントが張れそうな平地を捜し求めて歩いていた。





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古祖母山の展望所で長時間の休憩を取る。

時刻は13:00

休憩というのは半分間違いで、気持ちの半分はここでテントを張れそうだ、しめしめ、とう魂胆が見え見えであった。

ここに腰を下ろした時点で祖母山は諦めていた。体がそうした。

頑張れば後2時間は歩けるが、テントを張る場所が問題である。

目の前の古祖母山を越えて向こう側に降りれば水場があることになっている。

しかし、テントが張れるかどうかが重要なファクターとなる。

古祖母山~障子岳~祖母山は岩場だらけ稜線のイメージしかなかった。

山の地形をよく見ると全体がコの字型をしていて、古祖母山~障子岳は風の通り道になっている可能性が高いと見た。

今晩は緊急ということにしてここでテントを張ることに決めた。

古祖母山が壁となって風から守ってくれる気がした。

ここは登山道から少し外れているが、ここに座って休んでいると登山道から間違って登ってくる人が多いので困った。そのたびに正しいコースを教えてやった。

遅い昼ご飯のアルファー米を食べた後、明朝に食べるアルファー米にお湯を入れて下ごしらえをした。

朝になると冷たくなっているが優れた朝食であった。これだと作る手間がなくテント撤収に忙しい朝でも起きたらすぐに食べられる。

16時が過ぎた頃、登山者は通過しなくなったのを確認し、おもむろにテントを広げた。


標高1550mである。

夜になるとどうなるのか想像ができない。

風が最も心配だったが、夕方の時点で風はほとんどなかった。

夜になり、早々とシュラフにもぐる。

夜になって変わったことと言えば、風の音が大音響になったことである。

しかし、風はほとんどなかった。

想像するに、あの風は上空3,000m級の別世界で起きている暴風の音なのだと思う。

夜の宇宙は聞いたこともない暴風が吹き荒れていた。

でもテントが揺れるほどの恐怖はなかった。

わたしはあのとき宇宙の真下にいたんだと思う。




(続く)

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